手紙で相手の安否を尋ねるときに「お元気でいらっしゃいますか」と言う言葉を使いますが、これは、元気で「いる」の尊敬語です。ところがこんな場合に「お元気でおられますか」を使う方が
自分の思いを相手に伝えようとするあまり、表現にことさら大げさな言い回しを用いるのは、かえってイヤミだったりします。
依頼状で、どうしても相手に頼みたい用件を書くときに「藁にもすがる思いでお願いする次第です。」などと書くと常識を疑われてしまいます。いくらせっぱつまった状況にあっても「藁に〜」というのは「藁のよな、すがっても仕方のないものにさえすがりたい思い」と言う意味なので「そんなに頼りにならないと思うのなら、別の人に頼んだら」と思われても仕方ありません。
お礼状などに、「家族一同、感謝感激いたしております」などと書くのも大げさすぎて、本当の気持ちが伝わりにくいものです。とても有難い事を伝えたいのなら、借り物の言葉ではなく、家族の生の声を引用したりして、具体的に喜びを表現しましょう。
「小春日和」とは、春の暖かい日差しがうららかな陽気のことだと思っている方が多いと思いますが、実はそれは間違いなのです。
小春とは陰暦十月の異称です。この時期は寒い冬を前にして、ときおり寒さがふとゆるみ、暖かい春を思わせる日が続いたりする事があるからそこで「小春日和」と言うわけで、現在で言えば、晩秋から初冬にかかる頃に使う表現です。
時候のあいさつでよく見かける「風薫る季節」「薫風」と言う言葉も、やたらに使うと恥をかきます。風は一年中吹いていますが、薫る風とは、5月の風のことです。俳句では初夏の季語ですから「落ち葉が舞い、風も薫る秋となりました」などと使うと、おかしな表現になってしまいます。
使い慣れた言葉のようでも、実は間違った解釈をしている場合もありますので、十分注意しましょう。